第1回 あなたの腎臓は大丈夫?のコラムでは、CKD(シー・ケー・ディー)つまり慢性腎臓病の意味、程度(グレード)についてご説明しました。そしてグレードを決定するのはGFR(ジー・エフ・アール)と蛋白尿が重要であるとお伝えしました。今回はGFRの算出方法と、そのための検査項目や、蛋白尿についてご説明します。
検診で腎臓の働きが悪いことを指摘され、精密検査を希望して来院される方が多いのですが、精密検査をすすめられた理由は、血清クレアチニン(Cr)およびそれから算出したGFRの値に異常がみられるためです。腎臓の働きが悪くなっている場合、前者は正常値より上昇し、後者は低下しています。
Crとは
さてCrとは何でしょうか。Crは筋肉が動いたあとに残る老廃物で、腎臓で処理されます。腎臓の働きが悪いと体内に蓄積されるので、Crが上昇します。腎機能と関連があるので腎機能の指標として昔から使われています。測定はどこでもできること、コストも安いことから最も汎用されていますが、反面、値は筋肉量に左右されます。例えば筋骨隆々の方は同年齢平均より高めであり、筋肉のない痩せた方や、寝たきりの方では低めです。
GFRとは
GFRは体内にあるCrの濃度と年齢、性別から計算されます。日本においてはGFRの低下したCKDの方々のデータから算出されていますので、やや低めに算出される印象です。
GFRの算定ができるのはCrばかりではありません。血清シスタチン(Cys)という物質もよく使われます。Cysは血液中に含まれるタンパク質の一種で、体内の酵素の働きによって引き起こされる細胞や組織のダメージを抑制する作用を持ちます。これも、腎臓から排出されるため、GFRの算出が可能です。筋肉量には左右されませんので、筋骨隆々の方でも測定結果が影響を受けにくい物質です。
その他にもGFRを算定する方法は多数あります。算出方法の理想は本来体内に存在しない物質で、かつ腎臓から排出される物質を測定することです。その代表の1つがイヌリンです。これを点滴し、一定時間後に体内に残っているものと、尿に排出されたものを測定し、GFRを計算します。しかし、イヌリンは自然界に存在し、食物にも含まれますので、最もいろいろな影響を受けない検査として、核医学検査があります。
それぞれの算出方法の簡便さ、コストは表に記載しています(表1)。当院ではCrによるGFRのほか、CysによるGFRを計算しています。また、さらに精密なGFRを知る必要があればイヌリンを使用した検査を行っています。生体腎ドナーの術前検査には核医学検査を用います。
蛋白尿とは
尿は腎臓が血液を濾過したものです。血液には蛋白質がたくさん含まれますが、濾過の段階では蛋白はほとんど漏れないようになっています。でも、腎臓の糸球体が壊れてくると蛋白の漏れを止めることができなくなるために、検査で蛋白尿が陽性となってきます。前回のコラムで掲載したCKDの重症度分類の表では、蛋白尿の量が増えると右側に進んでいきます。つまり蛋白尿の出現程度ももう1つのCKDの指標です。
表1 GFRの算出方法のもとになる物質の種類、検査の簡便性、正確性、費用
GFR算出方法 | 体の中にあるか 外部からの投与か |
簡便性 | 正確性 | 費用 |
---|---|---|---|---|
血清クレアチニン値 | 自身の体内 | ◎ | ときに△ | ¥ |
血清シスタチン値 | 自身の体内 | 〇 - ◎ | 〇 | ¥¥ |
イヌリン投与 | 外部からの投与 | 〇 | 〇 - ◎ | ¥¥¥ |
核医学検査 | 外部からの投与 | △ | ◎ | ¥¥¥¥ |